【まなぶ】大学生レポート「茅おろし」

よく晴れた空がときどき雪を降らせた2月22日、職人の方々に教えていただきながら古民家の屋根の茅おろしを行った。集合時間の10時にはピースチェアに世代を超えた様々な参加者が集まり、賑やかな雰囲気のなか午前中の作業がスタートした。

民家の周りには足場が組まれており、その足場を利用して屋根に上った。そして屋根にかけられている茅を手ではがし、ひもでくくり一つの束にした。ひもは稲で作られたものを使用し、しっかり結べるがほどくときはほどきやすい稲ならではの結び方で結んだ。茅をはがすときは煤がたくさん出てきて顔は真っ黒になった。この煤は過去にこの民家に住んでいた住民が料理などで火を燃やした際に出たものである。想像以上に顔が真っ黒になったので、改めて職人さんはすごいなと感じたと同時に古民家の歴史も感じることができた。束にした茅は屋根の傾斜を活かして下に転がし、茅葺き屋根として再利用できる茅とごもくと呼ばれる茅葺き屋根として再利用できない茅に分けた。ごもくは茅葺き屋根ではなく畑などに再利用される。屋根の上での作業に少し恐怖を覚えたが、民家の周りからはいたるところから笑い声が聞こえ、参加者たちはみんな楽しく体験をしていた。

12時ごろに午前中の作業を終え昼食をとった。全員分のお味噌汁が提供されたが、お味噌汁を作るお湯はガスではなくストーブの上で温められたものであり、ここでもすでにある資源を有効活用する様子が見られた。たくさん動いたとはいえ、雪が降るなかでの作業で体は冷えていたため、普段よりもお味噌汁のぬくもりが感じられた。

古くなった茅を取り除くと、茅を固定していた竹が現れる。茅葺き屋根で茅おろしの作業をする中、その下では、この竹を回収し、しなる竹とボキボキと折れる竹に選別する作業を行った。しなる竹は次回の葺き替え時に補強材として再利用される。一方で、折れてしまう竹は粉々に砕き、畑や田んぼの肥料として活用されるほか、さまざまな用途に再利用されるようだ。茅葺き屋根の資材は廃棄されることなく、すべてが有効活用される仕組みになっており、ゴミが発生しない点が印象的だった。初めは、使えなくなった竹は捨てられるものだと思っていたが、自然の循環の中で再利用されることを知り、SDGsの観点からも優れた仕組みだと感じた。

すべての作業を終え、この日の目標として掲げていたおしるこを食べた。昼食のお味噌汁と同様、おしるこに入っていたお餅はストーブの上で焼かれたものであり、改めてストーブのもつ温かさの有用性に驚かされた。長時間の作業後に食べたおしるこは冷えた体を温めてくれ、その甘さによって疲れた身体が癒されていく様子が感じられた。

先人の知恵や当時の生活に触れながら、古民家の改修の大変さはもちろん、伝統的な茅葺き屋根が環境に優しい循環型の仕組みで成り立っていることなど、茅おろし体験を通じてしか得ることのできない学びが多くあった。また、実際に作業をしたり、詳しく知る人に話を聞いたりすることで知識を深めることができたため、学びの姿勢についても考えられる良い機会となった。自分が真っ黒になっていることも気にならないほど作業に没頭し学びで溢れた1日はとても貴重なものであり、これからの作業がより楽しみになる日となった。

                近畿大学 総合社会学部 総合社会学科 松野・竹上・渡部